こんにちは!Kredo Blog編集部です。
「AIで仕事を楽にするアプリを作りたい。でも、会社の表や顧客の資料を使ってよいのか分からない」。学習を始めたときに、ここで手が止まることがあります。
そんなときは、実際の資料を持ち込まず、試したい作業の条件から架空のデータを作る方法があります。名前を消した会社の表を用意するのではなく、「何を入れて、何を判定したいか」だけを整理し、小さな練習問題にするのです。
この記事では、備品の補充候補を出す課題を使います。架空の入力12件、正解表、ブラウザで値を変えられる教材を用意しました。AIへの依頼文を考える前に、どのデータがあれば動作を確かめられるか、一緒に組み立ててみましょう。
会社の資料を貼る前に、再現したい作業を一文にする

最初に決めたいのは、AIに渡すファイルではなく、解きたい作業です。「総務の仕事を自動化したい」では広すぎるので、今回は次の一文まで小さくします。
取扱中の備品について、現在の在庫が目標より少なければ、補充候補と不足する数量を表示する。
この目的なら、在庫、目標の数量、取扱中かどうかが必要です。一方、担当者の氏名、仕入先の連絡先、実際の価格、社内の管理番号は計算に使いません。最初から列を作らなければ、後から隠す作業も増えません。
品名も「備品A」「備品B」で十分です。IDは学習用のD001、D002とします。実在の備品台帳と一対一で対応させず、数量もこの記事のルールを試すために新しく決めます。仕事の構造を借りても、元の記録は運ばないという考え方です。
機密を含む業務ルールまで写さない
数値だけを作り替えても、非公開の取引条件や独自の審査基準をそのまま指示文に書けば、別の情報が残ります。学習用には、一般的な「在庫が目標未満なら差を出す」といった条件まで単純化してください。社内資料をAIへ渡し、「まず安全な架空データにして」と頼む方法も、元資料を入力した時点で外部へ渡しています。
実際の業務資料を使う必要がある場合は、所属先が認めるサービス・情報の範囲・利用方法を、入力前に確認します。個人情報保護委員会の注意喚起も、入力する個人情報の利用目的や、サービス側での取扱いを確認するよう求めています。学習目的だから自由に使える、とは考えないでください。個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
名前の置き換え・匿名加工・合成データを混同しない
「ダミーにしたから大丈夫」という言い方には、異なる作業が混ざりがちです。少なくとも、次の違いを押さえておきましょう。
| 作業・用語 | 何をするか | それだけでは言えないこと |
|---|---|---|
| 名前を伏せる・別名にする | 実データの一部を隠したり、IDなどに置き換えたりする | 他の項目から人物や会社が分からなくなった、とは限らない |
| 法令上の仮名加工情報 | 他の情報との照合がなければ、特定の個人を識別できないように加工した情報 | 自由に社外提供できるわけではない。作成者では原則として個人情報に該当し、第三者提供も原則禁止 |
| 法令上の匿名加工情報 | 定められた加工により個人を識別できず、元の個人情報へ復元できないようにした情報 | 氏名だけ消せば完成するわけではない。加工や取扱いに関する義務がある |
| 合成データ | 人工的に生成するデータ。実データの特徴をモデル化して作る方法もある | 「合成」という名称だけで匿名性が保証されるわけではない |
| 今回の架空データ | 実データを参照せず、学習用のルールから値を作り起こす | 現実の分布、需要、実務での性能までは再現していない |
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
仮名加工情報と匿名加工情報は、日本の個人情報保護法の用語です。単に「名前を仮名にした」という日常的な表現と、法令上の要件を満たした情報を同一視しないでください。詳しい定義と取扱いは、個人情報保護委員会のFAQと仮名加工情報・匿名加工情報編のガイドラインで確認できます。
技術用語としての合成データについても、英国ICOの用語集は、元データのモデルから生成され、匿名である場合もそうでない場合もあると説明しています。これは日本法の判断を置き換える資料ではなく、「生成したデータなら無条件に安全」とは言えないことを理解するための補助資料です。ICO:GlossaryのSynthetic data
この記事の教材は、実データを匿名化する道具ではありません。実在の人や顧客にひも付く表を読み込む機能も付けていません。自分の課題を作る際も、まずは元データを参照しない小さな例から始めると、制作と検証に集中できます。
架空の備品データを、判定ルールから作る

適当な数字を100件並べるより、結果が変わる条件を先に選ぶ方が、確認しやすいデータになります。目標が5個なら、在庫4個、5個、6個の違いが大切です。特に5個ちょうどのとき、補充するのかしないのかを決めておきます。
入力の列と値の意味を決める
今回、AIに渡す入力は次の5列です。数値の列もファイル内では文字列として扱い、空欄と0を区別します。表示用の品名を変えても、判定は変わらない設計です。
| 列名 | 意味 | 今回の規則 |
|---|---|---|
| case_id | 練習ケースの識別子 | D001〜D012。結果と元の行を照合するために使う |
| item | 架空の品名 | 備品A〜備品L。表示用 |
| stock | 現在の在庫 | 半角整数0〜999。空欄を0へ補わない |
| target | 目標の在庫 | 半角整数0〜999。実在の会社の基準ではない |
| status | 取扱いの状態 | activeは取扱中、discontinuedは取扱終了 |
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
判定は「入力の確認→取扱終了か→在庫が目標未満か」の順にします。在庫が未入力なら、補充数を推測せず要確認です。数値の前後の空白は判定用に取り除きますが、負数、小数、全角数字はこの教材では条件を満たしません。
複数の問題が重なったときの説明も決めます。配布教材は、在庫空欄、目標空欄、在庫の形式・範囲、目標の形式・範囲、状態の順で確認し、最初の理由を一つ返します。IDの重複や任意のCSVの読込みまで検証する汎用ツールではありません。
正常・境界・対象外・入力不備をそろえる
D001の「在庫2、目標5」は通常の不足です。これだけ動いても、在庫が0のときや、取扱終了の品物をどう扱うかは分かりません。そこで12件を、確認する目的ごとに作りました。
| ケース | 用意した条件 | 期待する結果 |
|---|---|---|
| D001・D011 | 在庫2/目標5、在庫3/目標8 | 補充3個、補充5個 |
| D002・D003 | 目標5に対して在庫5、在庫6 | どちらも補充不要 |
| D004・D005 | 在庫0/目標1、在庫0/目標0 | 補充1個、補充不要。0を未入力にしない |
| D006・D012 | 在庫が不足していても取扱終了 | 補充候補からは対象外 |
| D007・D009 | 在庫が空欄、目標が空欄 | 不足数を推測せず要確認 |
| D008・D010 | 在庫が−1、状態が未定義のpaused | 規則に合わないため要確認 |
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
どのケースを何のために作ったかは、教材のdesign-cases.csvに残しています。AIへの入力用ファイルとは別にしてあるので、正解や検証意図を渡さずに判定を試すこともできます。
12件の教材を動かし、境界と正解を確かめる
架空データの設計・判定教材
ZIPを展開してindex.htmlをChromeで開きます。追加ライブラリ、AIの有料契約、ログインは不要です。外部へデータを送信せず、PC内で動作します。
「判定を実行する」を押すと、各行の判定と理由が表示されます。最初の答えは次のとおりです。補充数はD001の3個、D004の1個、D011の5個を足しています。
入力12件
補充:3件・合計9個
補充不要:3件
対象外:2件
要確認:4件
初期の期待結果と一致:12/12件
要確認の行にも出力のquantityは0を入れています。これは「補充の合計へ足さない」という出力側の約束で、入力の空欄を0へ修正したわけではありません。判定と理由を数量とセットで見てください。
0を取りこぼす実装と比べてみる
実装の選択を「意図的な誤り:0を未入力にする」へ変え、もう一度実行します。今度は一致が9/12件になり、D004、D005、D006が不一致になります。実際には値が入っている0を、未入力として扱ってしまったためです。
この比較で見たいのは、特定のAIが間違える割合ではありません。0を含む入力を準備しておかなければ、この種類の間違いを見つけにくいということです。比較用の誤りも、記事用に用意したコードです。
一つ変えたときの答えを先に書く
正しい実装に戻し、D001の在庫を2から5へ変えてみましょう。「変更を反映する」を押す前に、補充の件数と合計を予測します。
練習1:D001の在庫を5にした答え
D001は目標に達するため補充不要。補充はD004とD011の2件、1+5=6個になります。補充不要は4件、対象外2件、要確認4件は変わりません。
練習2:初期状態からD005の目標を1にした答え
いったん「初期12件に戻す」を押してから変更します。D005も1個の補充候補になり、補充4件・合計10個。補充不要2件、対象外2件、要確認4件です。
練習3:初期状態からD007の空欄を0にした答え
初期状態へ戻した後、在庫を0にすると、D007は要確認ではなく5個の補充候補になります。補充4件・合計14個、補充不要3件、対象外2件、要確認3件。空欄と0が同じ意味ではないことを確かめます。
値を編集すると、画面は初期正解との自動比較を止めます。答えを変更後の値に合わせて自動的に書き換え、一致したように見せる仕組みにはしていません。自分の予測と、各行の結果を照らし合わせてください。
2026年10月6日、macOS上のChromeで、初期12件、意図的な誤り、上の変更操作、初期化、CSV保存を確認しました。Node.jsでも判定関数と入力を変更しないことを検証しています。WindowsやExcelでの画面操作、実在の会社のデータ、大量データでの性能は今回の検証に含みません。
AIには架空の仕様と入力を渡し、出力を照合する

入力だけを渡して「いい感じに補充リストを作って」では、0や取扱終了の意味が伝わりません。目的、列の意味、判定順、出力形式を短くそろえます。次は、今回の教材用に作った依頼例です。
以下は学習用に作った架空の備品データです。
目的:補充候補と数量を表示します。発注はしません。
stockとtargetは半角整数0〜999です。
前後の空白は判定用に除きます。
0は有効、空欄や規則外の値は要確認です。
在庫空欄→目標空欄→在庫の形式・範囲→
目標の形式・範囲→状態の順に確認してください。
状態はactiveかdiscontinuedです。
入力に問題がなければ、discontinuedは対象外。
activeでstockがtarget未満なら、差分を補充します。
それ以外は補充不要です。値を推測して補わないでください。
全行のcase_id、判定、数量、理由を示し、
最後に補充の件数と合計数量を示してください。
要確認・対象外・補充不要の数量は0とします。
続けて使うのは、配布教材のinput.csvまたはinput.jsonです。前者は表形式、後者はキーと値を持つ形式ですが、どちらも同じ12件・5列です。会社の表を添付する必要はありません。期待結果やdesign-cases.csvは手元に残して照合に使います。
この依頼例について、特定のAIサービスでの回答精度は測定していません。返ってくる文章や並び方が違っても、IDごとに補充するか、数量はいくつか、確認理由があるかを比べます。「合計9個」だけが合っていても、D001とD011の数量が入れ替わっていれば不正解です。
コードを作ってもらう場合も、同じ入力と正解表を使えます。入力を勝手に修正しない、対象外と要確認を混ぜない、別の品名に変えても数量が変わらない、といった条件を追加すると、何を確かめたかが明確になります。画面の操作まで作ったら、AIで作ったアプリのテスト方法で保存や再読み込みなども確認してください。
成果物として見せる範囲と、実務へ戻す前の確認
完成した作品には、画面だけでなく「このデータをどう作ったか」を添えます。今回なら、次のように説明できます。
実在の会社の資料を使わず、備品補充という架空の条件から12件を作成しました。正常な入力、0、目標ちょうど、取扱終了、未入力を用意し、判定・数量・理由を期待結果と照合しました。実際の需要予測や、本番環境での運用は検証していません。
教材には、この作成元と利用範囲を書いたprovenance.txtも入っています。自分の作品では、そこを自分が行った作業に合わせて書き直してください。実測していない削減時間や成功率、会社への導入実績を付け足さないことが大切です。作品全体のまとめ方は、生成AIのポートフォリオの作り方でも紹介しています。
学習で動いた後に、職場で確認すること
架空データで動いたことは、実務で使ってよいという承認にはなりません。所属先へ相談する際は、作りたい機能とデータの種類を説明し、利用できるAI環境、権限、保管先、共有範囲、保存期間を確認します。個人情報がなくても、契約上の秘密や営業情報に当たる場合があります。
実務では、取扱終了後も在庫を保管する、発注単位は10個ずつ、納期を考慮する、といった追加条件があるかもしれません。今回の「目標との差」というルールをそのまま採用せず、担当者と条件を決め直し、その条件を試す架空ケースを追加します。実資料を使う必要性や法令上の加工の判断が生じたら、所属先の担当部門や専門家へ確認してください。
まずは学習用の小さな課題で、入力・処理・正解を説明できる状態を目指しましょう。表の処理をコードで学ぶならPythonでCSV集計を自動化する実習、学ぶ環境を考えるならAI留学で学ぶ方法と選び方も参考になります。
自分の仕事に近い課題でAIを学びたい方は、作ってみたい機能を整理してご相談ください。会社の資料や顧客データを持ち込まず、学習内容から確認できます。
ダミーデータ作成でよくある質問
実データの名前だけ変更すれば、AIへ渡してよいですか?
それだけで判断できません。日付、住所、役職、自由記述などから特定できる場合もあり、会社の秘密が残る可能性もあります。今回の練習では、元資料を加工せず、一般的な条件から新しい値を作っています。
合成データと書いてあれば、公開しても問題ありませんか?
名称だけでは判断できません。何を元にどう生成したか、元データとの関係、利用条件や共有範囲を確認します。本記事の架空データについては、実データを参照していないことと学習上の制約を明記しています。
何件のダミーデータがあれば十分ですか?
固定の件数ではありません。今回の12件は、決めたルールを観察するための小さな組です。条件が増えたら、それで結果が変わる例を足します。12件で動いたことを、大量データや実務全体の品質保証に広げないでください。
AIを使わずにこの教材で練習できますか?
できます。ブラウザ教材は決めた条件で判定するローカルのプログラムです。自分で正解を予測して確認するところまで、AIサービスへの接続なしで練習できます。
一次資料確認・教材検証:2026年10月6日。PPCの2023年6月2日注意喚起、FAQ、ガイドラインと、ICOの技術用語集を参照しています。本文の架空ルール・データ・依頼文は独自教材です。写真と水彩図解はAI生成の学習イメージで、実在の受講生・職場を撮影したものではありません。
英語でIT・AIを学べるKredo
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