AIで長い報告書を要約するときは、最初に「誰が、何を判断するために読むのか」を決めましょう。次に、要約の結論を支える数字と条件を原文で確かめます。文章が自然に読めることと、上司が判断に使えることは、別々に確認する必要があります。
この記事では、IPAの70ページの公開報告書「DX動向2026」を使い、社内でAIを試すかを検討するメモを作ります。実際に内部AIで生成した初回出力をそのまま示し、どこを維持し、何を補うと渡せる形になるかを追います。最後には、完成メモ、再利用できる指示文、確認用の記入メモを載せました。
先に結果を伝えると、今回の初回出力には、確認した主要な数値や対象の取り違えは見つかりませんでした。ただし、調査期間や回答者の範囲など、メモ単体で読んでもらうために補いたい情報は残りました。「AIの間違いを直す」だけでなく、正しい要約を仕事で使える説明に整える例です。
検証日:2026年10月9日。公開資料から取り出した文章と図表の一部を文字にした入力を、内部AIに渡しています。ChatGPTの製品画面にPDFをアップロードした操作検証ではありません。特定製品の精度、読み取り性能、時短率を比べた記事でもありません。
表紙はAI生成のイメージです。実在の職場を撮影したものではありません。
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1.要約の目的と渡す相手を決める
「この報告書を短くして」と頼む前に、読み終えた相手に何を判断してほしいのかを、一文で書いてみてください。全体像を知りたいのか、会議で説明したいのか、施策を提案したいのかで、残す内容は変わります。
今回は「社内でAIを試すかを検討する上司に、導入効果の調査結果と、自社で確かめることを伝える」としました。報告書全体の章を均等に縮めるのではなく、この判断に必要な箇所を選んで読みます。人材育成やデータ連携まで広くまとめると、肝心の導入効果とその条件が埋もれてしまうためです。
文字数より先に、残すものを決める
上司向けのメモに残したいのは、主な調査結果、その数字が誰の回答なのか、調査から言える範囲、次に社内で確かめることです。初回は400〜600字程度としましたが、必要な条件まで削って字数を守ることはしません。完成版では、読み手が元の会話を知らなくても意味が通るように補います。
同じ報告書でも、研修資料を作るなら専門用語の説明が必要です。営業資料に引用するなら、顧客に伝える主張を裏づける箇所を重点的に確認します。要約の長さは、こうした使い道を決めてから調整しましょう。
なお、目的に合わせて読む範囲を絞ることと、都合のよい結果だけを抜き出すことは違います。効果を取り上げるなら、その効果を尋ねた相手の条件も一緒に読みます。費用やリスクが判断に不可欠な案件なら、今回の効果の章だけで結論を出さず、関連章や社内資料へ確認を広げてください。
2.原本を選び、AIに渡す範囲を確かめる
教材に使うのは、IPAの「DX動向2026」公表ページから取得できる本文PDFです。公表ページには本文70ページとデータ集106ページが別々に掲載されています。今回は本文を使います。
公表日は2026年7月30日です。公表ページの最終更新日は8月4日ですが、更新履歴の内容はウェビナーの申込終了の掲載でした。ウェブページの更新日だけを見て「PDFの数値も8月に改訂された」と判断しないようにします。
必要な章と、条件を説明するページをセットで渡す
今回は次の範囲を入力に含めました。ページ番号は原本に印刷された番号です。このPDFではPDFビューアのページ順とも一致しています。
- p.34の3.4節とp.35:AI導入による効果と、その回答対象
- p.2:調査を実施した時期と、年度表記の説明
- p.67の6.1節:調査の対象と有効回答数
本文から文章を取り出し、p.35の図表3-14については、原図を見て対象社数と本文で挙げられた5項目の数値を文字にして追加しました。原本全体をAIに読ませた結果ではなく、選んだ範囲から作った要約です。見ていない章まで確認済みのように扱うことはできません。
抜粋は、次の順で作ると確認箇所を見失いにくくなります。
- 原本で必要な節を開き、貼り付ける文章の前に「p.34・3.4節」のような見出しを付けます。文章の途中だけを切り出さず、対象条件を書いた注記まで含めます。
- 図の数値がコピーできない場合は、原図を見ながら「図表番号・対象社数・項目名・数値・単位」を文字にします。必要な項目だけを選んだ場合は、一部の転記であることも書きます。
- 送信前に、貼り付けた文章を原本と見比べます。改行で語が切れていないか、脚注が抜けていないか、数字と項目名の組み合わせが合っているかを確認します。
この準備にも確認作業が必要です。ページ番号を付けずに文章だけを貼ると、あとで根拠を探し直すことになります。図の注記を切り離すと、数字は読めても対象がわからなくなります。抜粋するときは「章・ページ・図表番号・対象条件」を一組にしてください。
PDFの図表は、本文とは別に読み取れたか確かめる
PDFを渡せたことだけで、図の中の小さな文字まで読めたとは限りません。今回の本文抽出でも、図表中の対象社数は文字として取り出せず、原図を見て補いました。
たとえばOpenAIのファイルアップロードの公式説明では、文書内画像への対応はプランとファイル形式によって異なり、PDFの視覚情報取得に対応する場合と、デジタルテキストを取り出す場合が分けられています。使う環境で対応を確かめ、重要な図は「図題、対象社数、注記を挙げてください」と質問して原図と照らしましょう。読めていない箇所は、許可された方法で該当ページの画像や文字起こしを追加します。
社内資料で同じ作業をする場合は、先に会社が認めたAIと入力できる情報の範囲を確認してください。氏名だけを消しても、顧客名、契約条件、未公開の数字が残ることがあります。入力してよいか判断できない資料は、練習用の公開資料に置き換えて手順を確かめる方法もあります。
3.実際の指示文と初回出力を保存する
初回は、次の指示文の後ろに、先ほどの範囲の文章と図表の文字起こしを付けて渡しました。ここに載せる指示文は実際に使ったものです。後半に紹介する詳しい再利用用プロンプトとは分けています。
下が内部AIによる1回目の出力の全文です。生成後に文章を直したり、失敗例に見えるように変更したりしていません。入力・出力・生成日時は制作記録に保存しています。
生成日:2026年10月9日(UTC)。内部AIで1回生成。製品画面のモデル表示、契約プラン、生成パラメーターは取得していません。同じ入力で同じ文章が再現されることを示す例ではありません。本出力はIPA公開資料を基にAIが要約したもので、正確でない場合があります。
初回出力の出典:IPA「DX動向2026」p.2、pp.34–35、p.67。
対象を限定した割合であることや、資料だけでは自社の費用対効果を判断できないことは、初回から書かれていました。この文章を見て「数字も注意点もあるから完成」とせず、次に原文を開きます。出典ページが付いていても、そのページに同じ主張が書かれているかは別の確認だからです。
初回の第1項後半にある「導入だけで十分な成果が得られるとは限らない」は、調査の数値そのものではなく、結果に対するAIの読み取りです。「資料の事実」という見出しの中でも、数値と解釈を分けて確認します。
また、原文を読む前にAIへ「この要約は正しいですか」と聞いても、それだけでは裏づけになりません。同じAIが自分の文章を読み直すことは点検の手助けになりますが、出典との一致を確かめる作業は残ります。
4.数字・対象・時期を原文に戻って照合する

すべての文を同じ重さで確認すると、読む範囲を絞った意味がなくなります。最初に見るのは、結論を支える数字、対象を決める注記、時期、そして「効果がある」「導入すべき」といった判断につながる表現です。今回は、初回メモに出てきた主な割合と対象条件から確かめました。
割合の分母は、隣の図でも変わる
図表3-14の「91.6%」を確認するときは、数字だけでなく下の注記を読みます。対象は、AIの導入効果の設問で「期待以上」「期待どおり」「一定の効果」のいずれかを選んだ企業です。原図の表示は853社。調査全体の有効回答1,799社を分母にした割合ではありません。
一つ前のp.34にある図表3-13は、AIを導入している、または試験利用している企業が対象で、原図には1,037社とあります。初回入力にはこの図の対象社数を追加していなかったため、完成版では原図の確認結果として補いました。近接する図の対象を同じものとして読み進めないことが大切です。
- 調査全体の有効回答:1,799社
日本企業への調査の全体。回答対象は公務を除く19業種の企業の経営層またはICT関連事業部門です(p.67)。
- 導入効果の状況:1,037社
AIを導入・試験利用している企業が対象。期待以上・期待どおりの効果は合計31.8%、一定の効果は50.6%です(p.34、図表3-13)。
- 具体的な効果:853社
効果について上記の3種類の回答をした企業が対象。この853社における業務効率化・迅速化の回答割合が91.6%です(p.35、図表3-14)。
IPA「DX動向2026」pp.34–35、p.67を基に編集部作成。原図の転載ではありません。各割合はそれぞれの対象内の回答割合です。
今回の初回出力は「効果を認めた企業853社」と対象を限定し、「全企業や全導入企業の割合ではない」とも書いていました。この点は正しいため維持します。読み手が元の設問を追えるよう、完成版では「効果を認めた」が具体的にどの回答を指すかを補足します。
91.6%は時間の削減率ではない
91.6%が示すのは、対象企業のうち業務の効率化・迅速化という効果を挙げた割合です。作業時間が91.6%短くなったという意味ではありません。同様に3.9%は、売上・利益の向上を挙げた割合であり、売上が3.9%増えたという数値ではありません。
この区別を確かめるには、数値の前後を読むだけでなく、図題と回答項目を確認します。「何%の企業が答えたか」と「どれだけ改善したか」では、上司が受け取る意味が大きく変わります。今回の図だけから、自社で何時間減らせるか、投資を何か月で回収できるかは計算できません。
年度・実施時期・公表日を分ける
報告書は今回の結果を「2025年度調査」と呼んでいますが、実施期間は2026年4月中旬〜6月中旬です。これはp.2とp.67を合わせて確認できます。初回出力にも「2026年実施」とあり、年度の取り違えはありませんでした。完成版では月まで補います。
「DX動向2026」という題名だけでは、いつの回答かはわかりません。また、2026年10月に読む場合でも、10月時点の企業の状態を観測した結果にはなりません。日付を明記しておくと、読み手が別時点の調査と比較するときにも混同を避けられます。
正しい箇所の維持と、不足の補足を分けて記録する
照合した結果は、次のように項目ごとに残します。内容が間違っている場合だけ「訂正」とします。今回確認した主要な数値・対象には誤りを認めず、作業の中心は補足と読みやすさの編集でした。
維持
853社、91.6%、3.9%
初回出力は対象を限定し、数値も原図と一致しました。数字を変えず、回答対象の説明を詳しくします。
照合:p.35、図表3-14と注記
補足
調査期間と回答者の範囲
「2026年実施」に、4月中旬〜6月中旬を追加。国内企業の誰に尋ねたかと、対象となる業種の範囲も補います。
照合:p.2、p.67の6.1節
編集
提案を判断しやすい順番へ
初回の「小規模に試す」という提案を残し、最初に相談したい事項を示します。提案は編集上の判断であり、IPAの結論として扱いません。
事実の訂正ではなく、用途に合わせた編集
たとえば別の要約で「日本企業の91.6%が効率化」と書かれていたら、対象の範囲を戻す訂正が必要です。これは条件を落としたときの説明例であり、今回のAIが実際に出した文ではありません。確認した主要項目に誤りが見つからなかった初回出力を、訂正前後の見せ場を作るために書き換えないようにします。
最後に、対象はAI導入に関する回答であり、ChatGPTだけ、あるいは生成AIだけの効果を示した図ではないことも確認しました。回答結果だけでAIと成果の因果関係を証明したり、同じ割合で自社にも成果が出ると予測したりすることは避けます。
5.補足を反映して、上司向けメモを完成させる

次が、照合結果を反映して編集した完成例です。初回に正しかった数値と提案の方向は残し、対象社数、実施期間、回答者の範囲を補いました。調査結果と自社への提案が混ざらないよう、段落も分けています。以下は架空の社内利用場面に向けたメモ例で、実在企業の導入決定や実績ではありません。
AIの社内試行を検討するための調査メモ
相談したいこと
公開資料の要約など、効果を確かめやすい業務を一つ選び、小規模な試行の設計を進めたいと考えています。以下の調査結果は参考になりますが、自社の効果や安全性を保証するものではありません。対象業務と確認担当者を決める相談をお願いします。
1.調査で多く挙げられた効果
IPA「DX動向2026」では、AI導入効果を「期待以上」「期待どおり」「一定の効果」のいずれかと答えた853社のうち、業務の効率化・迅速化を挙げた割合は91.6%、売上・利益の向上を挙げた割合は3.9%でした。これは効果の内容を尋ねた回答割合であり、時間の削減率や売上の増加率ではありません(p.35、図表3-14)。
2.期待した効果と調査の範囲
AIを導入・試験利用している1,037社では、期待以上・期待どおりの効果は合計31.8%、一定の効果は50.6%でした(p.34、図表3-13)。調査全体では、公務を除く19業種の日本企業の経営層またはICT関連事業部門から1,799社の有効回答を得ています。実施期間は2026年4月中旬〜6月中旬で、報告書では「2025年度調査」と表記しています。海外企業の調査は行っていません(p.2、p.67)。これらは今回の回答企業の結果であり、すべての日本企業や現在の状況をそのまま示すものとは扱いません。
3.自社で確認したいこと
まずは、会社が入力を認めた資料を使う一つの業務に対象を絞ることを提案します。試行前に、従来の作業時間と成果物の品質を記録し、AIへの入力準備、原文照合、修正を含む時間と比べます。利用費用、見逃せない誤りの基準、入力できる情報、最終確認を担う人も決めます。継続や対象拡大は、その結果を確認してから判断する案です。
この資料だけでは判断できないこと
今回確認した図はAI導入に関するもので、特定の生成AI製品の評価ではありません。自社で得られる効果の大きさ、因果関係、費用対効果、情報管理上の安全性は、この回答割合だけから判断できません。
出典:IPA「DX動向2026」本文PDF(2026年7月30日公表)、p.2、pp.34–35、p.67。2026年10月9日確認。公開資料を基にAIの初回出力を原文と照合し、編集部が補足・編集したメモ例です。
初回にあった企画提案の品質・速度向上48.9%は、原文と一致しています。ただし、完成版では相談の焦点を業務効率化と売上・利益の違いに絞り、採用しませんでした。正しい情報を用途に合わせて省くことと、誤った情報を訂正することも区別します。
この完成例をそのまま自社の提案として送る前には、「公開資料の要約」が実際に検討したい業務かを確認してください。すでに試行済みの会社なら、必要なのは導入の相談ではなく、試行結果や運用変更の報告かもしれません。外部資料に基づく事実は共通でも、相談したいことは自社の状況に合わせて書き換えます。
6.次の報告書で使うプロンプトと確認用メモ
次に別の報告書を読むときは、目的と範囲を埋めて、以下の指示文を使ってみてください。これは今回の確認作業を踏まえて作った再利用用テンプレートです。上に掲載した初回出力を生成した指示文とは異なり、このテンプレートによる追加検証は行っていません。
条件を細かく書いても、正確さが保証されるわけではありません。AIが示したページや対象社数を、原文で確認するところまでが一組です。見つからないときは何度ももっともらしい答えを出させるより、該当箇所を自分で探すか、未確認のまま残しましょう。
数字と条件を一緒に記録する
次のメモは、要約を読む画面とは別に手元に置くと使いやすくなります。数字が複数ある場合は「確認する主張」から「対応」までを必要な数だけ繰り返します。すべてを毎回埋めるための帳票ではなく、あとから判断の根拠をたどれるようにするための記録です。
わからない箇所を残したまま、どう渡すか
図表が読めない場合は、その数値を本文の結論に使わず、「対象条件が未確認のため採用保留」と残します。別の章で似た数値を見つけても、同じ設問かどうかを確かめるまでは代用しません。ページ表記にずれがある資料では、「本文p.35、PDFでは37枚目」のように両方を記録すると、相手が探しやすくなります。
要約の結論に直結する点が未確認なら、確認を終えてから提出するか、未確認であることを冒頭で伝えます。一方、今回のように自社の費用対効果が外部資料からわからないことは、要約の失敗ではありません。誰が何を追加で確かめるかへつなげれば、上司が次の判断をしやすくなります。
AIによる要約を仕事で使うときは、自然な文章が出たところで終わらせず、目的に必要な主張を原文へ戻して確認しましょう。正しい情報は維持し、不足は補い、誤りがあれば訂正する。この順番を守ることで、短くするだけで終わらない、根拠を説明できるメモに近づきます。
資料を読むAIの選び方も整理したい方は、ClaudeとGeminiの資料読み込みに関する利用者の声をまとめた記事も参考にしてください。本記事の確認手順は、どの製品で下書きを作る場合でも使えます。
参考資料:IPA「DX動向2026」公表ページ・本文PDF、OpenAI「Uploading files and audio to ChatGPT」。引用・加工表示はIPAの書籍・刊行物等に関するFAQを確認。図1は原本の対象条件を基に、図2は本記事の照合記録を基に編集部作成しています。原本PDFの再配布は行わず、公式掲載先にリンクしています。
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