このような疑問を解決するべく、オフショア開発の概要からメリット・デメリットなどを解説する記事です。
具体的には次の順番でお話ししていきます。
- オフショア開発とは?
- オフショア開発のメリット・デメリット
- オフショア開発の現状・動向
- オフショア開発のポイント・注意点
オフショア開発について知りたい方向けの記事ですので、ぜひご覧ください。
記事のもくじ
オフショア開発とは?→海外企業に業務を委託すること
オフショア開発とは、海外企業に業務を委託することで開発コストを削減する手法です。
ここでは、オフショア開発の目的や委託する主な業務、市場規模について見ていきましょう。
オフショア開発の目的
従来のオフショア開発では、おもに開発コストの削減が最大の目的でした。
しかし、近年では「リソースの確保」「質の高い開発」「研究開発拠点の確保」に重きを置いていると言えるでしょう。
現在の日本は急速に進む少子高齢化によって生産年齢人口は年々減少傾向に。
その結果、常に人手不足の状況であり、IT関連企業においてはさらにエンジニアの数が足りていません。
そのため、拡大するコストの増大とリソース不足を解決するためにオフショア開発が活用されているのです。
日本企業のオフショア開発活用状況としては、少し古いですが2012年のIPAの調べでは日本企業の45.6%がオフショア開発を活用しています。
参考:プレス発表「ITの人材白書2012」のポイントを紹介(IPA)
委託する主な業務
オフショア開発では具体的にどのような業務を委託するのでしょうか。
おもにオフショア開発で委託する業務としては、次のようなものが挙げられます。
- システム、ソフトウェア開発
- Webサービス開発
- システムの運用、保守
など
名前に「開発」とついている通り、多くはシステムやソフトウェア、Webサービスなどの開発の委託です。
しかし、なかにはシステムの運用・保守も含まれており、一概には開発のみとはいえません。
開発で具体的にどの程度まで委託するかは企業やプロジェクトによっても異なります。
その際に、円滑に海外エンジニアとコミュニケーションをとるために「ブリッジSE」の存在は欠かせません。
ブリッジSEについては以下の記事で詳しくまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。
オフショア開発の市場規模
オフショア開発の市場規模は年々増加傾向にあります。
少し古い情報ですが、IPAの調査によると日本のオフショア開発の規模は2002年に200億円でしたが、2011年には1,000億円に成長しました。
また、世界規模で見てみると、2000年に456億ドルだった市場規模は2019年には925億ドルまで成長しています。
加えて、ベトナムのオフショア開発の市場規模は2017~2019年で約4,000億円と言われており、オフショア開発の市場規模が大きくなっていることがわかります。
参考:IT人材白書2013-グローバル/オフショア動向調査(IPA)
参考:Global market size of outsourced services from 2000 to 2019(statista)
参考:ベトナムオフショア開発の市場規模は4,100億円超~数字で見るベトナムIT産業~(アプリ開発ラボマガジン)
オフショア開発のメリット・デメリット
ここからはオフショア開発のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
メリットについては軽く触れましたが、同時にデメリットも存在するため、しっかりと把握しておく必要があります。
メリット
オフショア開発におけるメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- コストの削減
- 人材(リソース)の確保
- 品質の維持
- 納期の短縮
オフショア開発が注目された当時からメリットとしてあげられるのは、コストの削減です。
システム開発における日本人の人件費は高く、海外エンジニアは人件費がおさえられるため、コストの削減効果があるとされてきました。
しかし、近年では海外エンジニアの人件費も高騰しており、この点は大きなメリットとはならなくなってきています。
とはいえ、海外エンジニアの質も向上しており、人材(リソース)の確保とあわせて、品質の維持もできるようになってきました。
そのため、近年ではリソースの確保や品質の維持といった点がオフショア開発の大きなメリットになってきています。
加えて、リソースの確保ができることによる納期の短縮もメリットになっています。
デメリット
オフショア開発におけるデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 時差による問題
- 国民性や文化の違いによる問題
- 商習慣の違いによる問題
日本から遠く離れた地域に委託するため、例えば仕様書の修正やバグ対応などを即座に対応したいとしても、時差によって連絡が取れないことが考えられます。
加えて、国民性や文化の違いによって、私達にとっての常識が海外エンジニアには非常識になることもあり、しっかりとコミュニケーションを取らなければスムーズに開発が進まないことも。
そのほかにも、商習慣の違いも挙げられ、オフショア開発におけるデメリットは日本との違いによって生じるのです。
オフショア開発の現状・動向とは
ここでオフショア開発の現状や動向について見ていきましょう。
開発先として選ばれる国や委託先の主要地域が東南アジアから東欧に変わる可能性について解説します。
オフショア開発先として選ばれる国
オフショア開発の委託先としては、中国・東南アジア地域が多くなっています。
IPAの2013年の調べでは、1位中国、2位インド、3位ベトナムであり、次いでアメリカ・カナダ、台湾・フィリピン・ミャンマーが委託先として上位に。
なかでも、少し前から注目されている国がベトナムであり、ベトナムでは国内のIT産業が発展しており、直近3年間ではその需要が約2倍にまで増加しています。
ベトナムは政府からの支援などによって優秀なIT人材が豊富で、治安が良いなどの理由もあり、日本向けのオフショア開発規模も拡大しています。
委託先が東南アジアから東欧へ変わる可能性
中国やベトナムなどの東南アジアへの委託が主流でしたが、今後は東欧へ変わる可能性があります。
東欧諸国のなかでも注目されている国がベラルーシです。
ベラルーシは隠れたIT立国として「東欧のシリコンバレー」と呼ばれていることをご存知でしょうか。
ベラルーシは人口950万人の小国ですが、ソフト・ハードを問わず優秀なITエンジニアが多いといいます。
今後オフショア開発の主流が変わるかもしれない理由としては、ベラルーシが小国かつ自国に資源がなく、国内のITエンジニアと非エンジニアとの所得格差が大きいことが挙げられます。
ベラルーシは小国であるため国内だけでは経済が回らず、外貨を獲得しなければなりません。
より資金が潤沢な市場で生き抜くために、語学と専門技術の向上に力を入れています。
また、ベラルーシのITエンジニアの平均月給は約2,000ドルであるのに対して、国民の平均月給は約500ドルと大きな差があります。
そのため、ベラルーシの多くの若者はIT分野で従事することを希望しており、国内の優秀層がITエンジニアを目指し、IT分野全体のレベルアップに繋がっているのです。
現在はオフショア開発の委託先としてベラルーシを選択する企業はほとんどありませんが、今後の委託先として注目されています。
オフショア開発のポイント・注意点
最後に、オフショア開発における成功のポイントと注意点を解説します。
コスト面だけに目を向けると失敗する可能性がある
オフショア開発で特に注目される点はコストの削減ですが、コスト面だけに執着すると失敗する可能性があります。
オフショア開発でコストが削減できる理由としては、日本よりも人件費の安い海外へ委託するためですが、しっかりとしたコミュニケーションや体制が整っていなければかえってコストが肥大化することに。
例えば、指示が曖昧で想定と違ったシステムになっていたり、国内から細かい指示が必要で膨大なチェックや修正対応が必要になったりすることが考えられます。
コスト面だけにとらわれることなく、しっかりとしたコミュニケーションとモチベーションの管理、教育環境の整備が重要です。
国民性や文化の違いに注意
デメリットでもお話ししたとおり、国が違えば国民性や文化も大きく違います。
その違いによって問題が生じることも少なくありません。
例えば、日本人は仕様書の「行間を読む」ことができますが、外国人には難しいでしょう。
そのため、仕様書の理解が浅かったり、そもそも日本スタイルの仕様書を理解できなかったりする可能性が考えられます。
コミュニケーション一つとっても、私達の当たり前が通用するとは限りません。
委託先の国民性や文化について理解し、問題が生じることのないように事前に対策する必要があります。
ブリッジSEの存在が欠かせない
オフショア開発では、日本と海外の違いが大きな問題となりえます。
そのため、両国間を繋ぐ役割であるブリッジSEの存在が欠かせません。
両国の国民性や文化の違いを把握し、円滑にコミュニケーションが取れるエンジニアとして、ブリッジSEが重要な存在となるのです。
オフショア開発の成功の鍵は、優秀なブリッジSEの存在と言えるでしょう。
ブリッジSEについては、以下の記事でも解説していますのでぜひご覧ください。
オフショア開発とは?メリット・デメリットから最新動向まで解説のまとめ
海外企業に業務を委託するオフショア開発は、エンジニアが不足するいまの日本になくてはならない手法になりつつあります。
日本国内だけでなく、世界規模でオフショア開発の市場規模は年々拡大傾向にあり、システム開発のグローバル化は今後さらに進むことでしょう。
オフショア開発はコスト削減、リソースの確保、品質の維持などのメリットもありますが、国民性や文化の違いによる問題などのデメリットも存在します。
それらのデメリットを解決するためには、ブリッジSEの存在が欠かせません。
今後もさらに拡大することが予想されるオフショア開発を進める際には、ブリッジSEとセットで検討してみてはいかがでしょうか。
なお、ITオフショア開発については、こちらの記事で詳しく解説されています。
合わせてご確認ください。