皆さんはAI(人工知能)と聞いたときに何を思い浮かべますか?
Google HomeやAmazon Alexaなどのスマートスピーカーといった現実世界、あるいは鉄腕アトムやドラえもんなどの架空の世界を思い浮かべたでしょうか。
しかし、「AI(人工知能)とは?」と聞かれて適切に説明できる人は多くはありません。
適切に理解している人が少ないために、メディアではAIというバズワードが乱用され、多くの人に間違った誤解を与えてしまっている問題もあります。
そこで今回はAI(人工知能)とは何なのか? AI(人工知能)の現状、そして未来はどうなるのか?
などについて、初心者にもわかりやすく、実例を交えて解説していきます! この記事を読み終えることろには、AI(人工知能)を自分の言葉で説明できるようになっているはずです。
記事のもくじ
AIとはなにか?
AI(人工知能)はこれ!と説明ができる人が少ないのもそのはず、そもそもAI(人工知能)というものを定義することは非常に難しいのです。
では、皆さんはAI(人工知能)と聞いて何を想像しますか?
ではなぜ、自動運転の車はAI(人工知能)と呼ばれているのでしょうか? それは自動車が人の介入なしに、自律的に道路を通行することができるからです。
具体的には赤信号でブレーキを自動で踏んだり、歩行者が横断歩道を渡っている際に人を認識して、自動で減速することです。 そしてこれをシンプルに表現すると、「自動化」や「無人化」と表現することができます。
では、自動ドアはAI(人工知能)と呼ぶことができますか?
しかし、自動ドア自体も人をセンサーで認識し、人がドアを開けることなく自動でドアが開きます。
つまり定義の仕方によって、私たちの身の回りにはAI(人工知能)と呼ぶことができるものはたくさん存在します。
そして、AIには厳密に定まった定義はありません。 これがメディアや企業のマーケティングにAIというバズワードが多用される大きな理由です。このことを知っておくだけで価値があります。
それでは、Wikipediaで『AI(人工知能)』を調べて、一般的な定義を見ていきましょう。
AI(人工知能)とは、計算という概念とコンピュータという道具を用いて知能を研究する計算機科学の一分野を指す語。言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術、または、計算機(コンピュータ)による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野ともされる
いまいちピンとこないかもしれません。
シンプルに表現すると、AI(人工知能)とは高度な計算処理ができるということです。 (どこからが高度と言えるのか?明確な基準がないからこそ、AI(人工知能)とは何かを表現することが難しいとも言えます。)
例えば、Googleの検索エンジンを想像してみてください。
インターネットが誕生し、誰でもWebページというものを作れるようになりました。 現在では何億何千何万というWebページが存在します。
しかし、検索がない時代を想像してみてください。私たちは、どのように欲しい情報にたどり着けるのでしょうか? 例えば、人間が1億個の情報から「セブ島」というページを一つ一つチェックしていたら、終わりが来ません。
この問題を解決したのが、まさにGoogleです。
Googleの検索アルゴリズムのおかげで、私たちは欲しい情報に短時間でたどり着くことができます。
大量のWebページや検索ワードからユーザーの欲しい情報を提供するGoogleの検索エンジンは、高度な計算ができるAI(人工知能)だといえるでしょう。
そしてGoogleは世界トップ企業となり、(2018年時点で)時価総額は80兆円を超えています。
このように”インターネット”という新しい時代に対して、必要な”解決策”を生み出したことによってGoogleはこれほどまでに大きな成長を遂げました。
特化型と汎用型、2種類のAI(人工知能)
今までAI(人工知能)をひとくくりで話をしてきましたが、実はAIには大きく分けて2種類あります。
ある特定のタスクに対して大きな力を発揮するAI(人工知能)
現在AI(人工知能)と呼ばれているものは、ほぼ特化型AIと呼ばれるものです。 例えば、お掃除ロボットは部屋の掃除はしてくれますが、帰宅時に鍵を開けてくれたりはしません。
そして汎用型AIは、人間のように複雑な処理を行うことのできるAI(人工知能)のことを指します。 AI(人工知能)最大の課題とも言われているのが、この汎用型AIの開発だとされています。
汎用型AIはただ特化型AIを組み立てることで、でき上がるというわけではありません。 例えば、SF映画で出てくるようなロボットのようなプログラムが汎用型AIと言えます。 我々の脳と同じような仕組みを、プログラミングで作成するというのはそう簡単なことではないのです。
そのため、汎用型AIの完成はまだまだ先、もしくは実現不可能といわれています。
AI(人工知能)は人間の予測を超えるとされる現状
今、最前線のAI(人工知能)現場における最大の課題はAI(人工知能)が賢すぎて人間の理解を超えてしまっているということです。
例えば、AI(人工知能)を用いた計算による予測などが非常に精度が高く注目を浴びるといったことがあります。 しかし、なぜそのような結果が出たのか明確には分からないといった事件が多発しているのです。
人間の理解がAI(人工知能)追い付いていないために、AI(人工知能)の成長が進んでいないという面もあるのです。
理解不能な言語を生み出すAI(人工知能)
2017年にFacebookが「価格を交渉して合意しろ」という目標をもうけ、価格を上げたい立場のAI(人工知能)と、価格を下げたい立場のAI(人工知能)でお互いに価格交渉をさせるという実験を行いました。
しかし、AI(人工知能)同士が会話をしていく中で、使用言語が変更され、人間が理解できない全く新しい言語で会話をし始めたのです。
この実験は、研究者が理解できないと判断したことから終了させられてしまい、世間からは「AI(人工知能)が人間に理解できないよう意図的に言語を変更したのではないか?」という声があがり大きな波紋を呼びました。
では、果たして本当にそうなのでしょうか?
実際にこの実験に関わったFacebook AI Research(Facebook人工知能研究所)のルブリュン氏は、
「AI(人工知能)は意思や目標を生み出さない。この実験では“最適な価格を導き出し合意までたどり着くこと”だけを目標としていた。その過程で言語が変更されたのは、目標にたどり着くための最適解であったからであって、人間に何かを隠すために言語を変更したという意見は全くクレイジーな狂言である」
と語っています。
人間の予測を超えてしまうがゆえに、飛躍的な解釈をしてしまうという世間の風潮もあり、今後AI(人工知能)とともに共存していくためには正しい理解が必要であるといえるでしょう。
天才囲碁棋士に勝るAI(人工知能)
みなさんはアルファ碁というものをご存知ですか? アルファ碁は、Googleによって開発されたAI(人工知能)の囲碁棋士です。
このアルファ碁は韓国で天才と言われていた囲碁棋士を2015年に破り世界から注目を浴びました。 さらに驚くべきは、アルファ碁の後に開発されたalpha zeroです。
alpha zeroははじめ、囲碁の知識が0であったにもかかわらずAI(人工知能)とAIで(人工知能)対局を重ねる、つまり学習を重ねることによってどんどん賢くなっていったのです。
そして、alpha zeroはアルファ碁より圧倒的な力を持つ囲碁棋士 AI(人工知能) となりました。 つまり AI(人工知能) と AI(人工知能) で学習することによって、人間の次元をはるかに超えた AI(人工知能) というものが作り出されたのです。
日本の将棋界では14歳という若さで史上最年少プロ技師になった藤井聡太四段が有名です。対戦相手は彼の打つ手に「見たことない」「予想を超えている」というコメントを残しています。
藤井聡太四段は小さい頃から将棋のソフトウェアと対戦をしていたそうです。これは、人間はAIから既存の枠組みを超えた知能を獲得していく時代になったことを意味しているのかもしれません。
まだまだ発展途上のAI(人工知能)の現状
データベースやAI(人工知能)の強みは、大量のデータを保存し、処理することができるところです。 その部分では人間はAI(人工知能)に勝ち目がありません。なぜなら、人間の記憶力では大量のデータを記憶し学習することは不可能だからです。
例えば、30日前に食べた朝ごはんと50日前に食べた朝ごはんを元に明日の朝ごはんを作るということは難しいでしょう。なぜなら、そもそもその記憶が残っていないからです。
一方でデータベースに30日前の朝ごはんと50日前の朝ごはんを記録さえしておけば、10年後でも取り出してくることができます。
しかし、AI(人工知能)は当然完璧ではなく、人間にかなわない部分や課題も残っています。 例えば、汎用型AIのような複数の異なる事象を掛け合わせることは人間の得意分野です。 いくつかのAIの課題を紹介します。
Googleが引き起こしたゴリラ問題
AI(人工知能)の領域で世界のトップであり、時価総額は80兆円をGoogleにも技術的課題は残っています。
皆さんは「ゴリラ問題」というものをご存知ですか? これは写真共有サービス「Googleフォト」で黒人を”ゴリラ”とタグ付けしたという問題です。 この事件は倫理的な観点から大きな物議を醸しました。 Googleこの事件以降、ゴリラやサルといった、霊長類のラベルを一切出さないといった対応をしています。
世界的大企業であるGoogleは時価総額が下がるような差別を意図的に試みたのでしょうか? 当然、そんなわけはありません。
Googleは大量のデータを機械学習を用いて、自動で画像を識別するプログラムを作っていたわけです。それを判断しきれなかったことを意味しています。 似たような問題にGoogle画像検索で「バカ」と入力すると、アメリカのトランプ大統領が表示されると言う問題もありました。
つまり、大量のデータを学習しているAIは、間違ったものや意図的に悪意のあるデータを学習させられることで、誤った判断を起こしてしまうわけです。
Uberの自動運転事故
自動運転は現在非常に注目されており、メディアではかなりポジティブに語られていますが、完全な自動運転と呼べるレベルまでの道のりはまだ先です。。
人間というのは無意識が8割ほどで行動を行なっています。車を運転している時も同様に無意識の状態で情報をリアルタイムで処理しています。 この無意識を再現することは非常に難しいため、AIの学習させることも困難であるとされています。
2018年3月、アメリカのUber社が実験走行をさせていた自動運転車が死亡事故を起こしたのをご存知でしょうか? 歩行者を轢いて死亡させてしまった事故としては世界で初となり、自動運転技術の安全性に疑問が上がる中、「開発をやめると自動運転技術やAI(人工知能)の進歩が遅れてしまう」という意見もあり大きな話題となりました。
事故後にはドライブレコーダーが公開され、事故時にはドライバーがよそ見をしていたことが発覚しました。 責任の所在についての議論も巻き起こり、今後の自動運転やAI(人工知能)技術の課題が浮き彫りとなったのです。
AI(人工知能)の成長は予測不能
技術・社会で大きな課題が残る一方、AI(人工知能)は、「指数関数的に成長するため、現在は爆発的な成長をする一歩手前なだけである」と見解を示す代表例がイーロンマスクです。(ZOZOTOWNの前澤社長が月に行くというニュースを知っている人は多いと思います。その月に行くためのロケットを作っているのがイーロンマスクです。)
多くの研究が進められていますが、いつ自動運転が実用レベルになるのかを正確に予想することは非常に難しいです。
なぜAI(人工知能)は発展してきたのか
AI(人工知能)が近年発展してきた理由として以下の要素が挙げられます。
- コンピュータの処理能力の向上
- ネットワーク環境の発展
- 大量のデータの蓄積
特にこの中でも大量のデータの蓄積、ビッグデータがAI(人工知能)の発展を加速度的に成長させてきました。 もちろん、大量のデータを必要とせず少ないデータから精度の高いアルゴリズムを生成するという方法もあります。
簡単な例で言えば、ある教室に50人の生徒がいたとして、そのうち10人がメガネをかけていたとします。 そのデータを元に、全校生徒1000人の学校に、どれだけメガネをかけた生徒がいるのかを予想するというようなアプローチです。
当然50人よりも900人の情報を元にした方が、推測は正解に近くなります。 つまり、データ量が多ければ多いほど正確性は増しやすいのです。
このように、4Gやスマートフォンの普及、パソコンの計算パワーの向上など、ITインフラが発展したことによって、大量のデータの蓄積が蓄積され、AI(人工知能)の発展を押し上げてきました。
AI(人工知能)の発展が現状著しい国
AI(人工知能)分野の発展が著しい国と聞いて、皆さんはどの国を想像しますか? アメリカもそうですが、実は中国でもAI分野は目覚ましい発展を遂げています。 ではなぜ、中国でAI分野の研究が進んでいるのでしょうか。
中国でAI分野の発展がほかの国より進んでいる理由は大きく2つあります。
- 中国政府が企業と一体になってAI産業の発展に務めているから
- 中国の莫大な人口が、AIの発展には大量のデータを生み出しているから
勘のいい方はお気づきかもしれません。 そう、中国が抱える世界最大の人口が中国のAI発展のカギとなっているのです。
社名に”Face”とあるようにFacebookは、顔認証の技術で世界をリードしていました。 しかし近年では中国のFACE++というサービスが世界一の顔認証技術を持っているといわれています。 FACE++は一卵性双生児の双子も判別できる技術をもっています。
ではなぜ、FACE++が世界一の顔認証技術を持つサービスとなったのでしょうか。
その理由の一つは、この技術が中国政府公安局にも採用されているためです。
つまり、中国国民の顔データにアクセスできますし、さらには観光客などの顔データまで収集できることでしょう。 この人口によるデータの絶対量の多さとデータにアクセスできる政府連携を通じて、世界トップの顔認証技術を可能にしているのです。
また、AI(人工知能)関連の論文の数は中国がアメリカを上回っています。 最新のAI(人工知能)の情報にアクセスしようとした場合、ほとんどが中国語か英語の情報です。
AI(人工知能)の技術に関しては日本と中国は、すでに追い付けないほどの差が開いてしまっているのです。
AIエンジニアに現状数学は必要なのか
結論から言うと必要です。ただ多くの生徒が勘違いをしているのも事実です。
よく生徒の方で「私は数学ができないのでAI(人工知能)の分野は無理」という方がいらっしゃいます。
しかし、数学を苦手とする人の多くは数学の公式を数字や記号の羅列として捉えてしまい、理解不能になってしまっていることがほとんどです。 数学の公式というのは現象や予測の抽象化です。
簡単に説明すると、「こぼしたコーヒーを元に戻すことはできない」という文章は日本語を使って表現しています。これを重力や質量の法則を使うことで、日本語ではなく数学記号で表現することができます。 つまり、英語の文法を学ぶのと似たようなものです。
さらに重要なのは目的をベースに数学を学ぶことです。これまでは数学が実際に何に役立つか知らないまま、テストのために暗記を繰り返していたかもしれません。
しかしこれからは、「AIを学んでいたら変化の割合を考える必要がある。そのために微分が必要みたいだ。」という目的ベースで学ぶことになります。そのような学びは非常に楽しいものです。
実際にAIと言っても業務は多岐に渡るため、数学を専門としない人がほとんどです。 さらにAI関連のツールも豊富にあるため、ある程度の仕事が可能です。一方でツールは使えるが、中身を理解していない人も増えていることが現場の声として増えてきています。
ワンランク上を目指して、中身が理解できるエンジニアを目指しましょう。 実際にいわゆる文系出身でAI業界で働いているエンジニアの方も沢山います。
不足するAI人材の現状
現在日本では、2020年問題、2030年問題といわれるようにIT人材の不足が大きな社会問題になっています。
特に、AI分野ではエンジニアの供給が追い付いていないのが現状です。 世界全体でみてもAI人材の不足は、100万人の需要に対し、30万人ほどしかいません。 その中でも、日本はAI(人工知能)分野での発展が遅れているのです。
経済産業省では、AI(人工知能)やビックデータ、IoTを活用できる先端IT人材は2020年までに4.8万人が不足すると発表しています。 「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(経済産業省 2016年6月10日)
さらに、EY総合研究所の試算では2030年にはAI(人工知能)業界の市場規模は約87兆円にまでなると予測しており、特に運輸業界では自動運転技術が用いられ30兆円もの市場に達するといわれています。AI(人工知能)分野での人材不足はこれからも加速していくでしょう。
高騰するAI人材
日本、そして世界でのAI人材の不足を踏まえると、これからの未来、AI(人工知能)の仕組みや知識を理解したうえで、それらを何に活かすことができるのか考えられる人材は、非常に貴重であるといえるでしょう。
また貴重であるがゆえに、AI人材の争奪戦が起こっており、1,000万円を超える年収を提示する企業も少なくありません。
- リクルート データサイエンティスト:年収580万円〜1,200万円
- カカクコム 機械学習エンジニア:年収550万円~1,200万円
- ソニー 人工知能・機械学習領域 研究開発エンジニア:年収500万円〜1,000万円
(求人広告サイト「DUDA」、求人広告サイト「indeed」より)
これからの時代、サービスの発展を遂げるためには、AI(人工知能)の活用は必要不可欠です。