みなさん、初めまして。
Sun*inc.フィリピンマネージャーの西出と申します。
今回は、「IT技術の未来を予想する方法」と題し、「5年10年先の未来」を予見する方法についてご紹介できればと思います。
記事のもくじ
ガートナーのハイプ・サイクルとは?
今回未来を予見するにあたって、「ガートナーのハイプ・サイクル」という概念を参照しながら話を進めさせて頂ければと思います。
「ハイプ・サイクル」とは、特定の技術やテクノロジーが、社会でどの程度期待され、実用レベルで採用されていくか、というサイクルを時系列で表現した図となっています。
世界的に有名なガートナーという、リサーチ・コンサルティンググループが提唱している概念です。
「ハイプ・サイクル」には、下記の5段階があるとされています。
- 黎明(れいめい)期 – 技術の発生段階
- 流行期 – 世間で認知されて話題になる時期(「過度な期待」を掛けられている時期)
- 幻滅期 – 過度な期待が一度収束する裏側で、より現実的な社会利用の方法が模索されている時期
- 回復期 – 徐々に現実的な社会利用が根付き始める時期
- 安定期 – 安定的に社会利用が進み、さらに応用的な利用へと進んでいく時期
この「ハイプ・サイクル」という概念は広く受け入れられる概念となっており、プログラミング言語の流行などにも当てはめて考えることが多いです。
そのため、「IT技術やテクノロジーの栄枯盛衰」を知る上で、非常に参考になる指標となっています。
ガートナーのハイプ・サイクルから見える今後10年で世界を変えていくIT技術とは?
たとえば、2018年の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」を見てみます。
昨年「先進テクノロジのハイプ・サイクル」が発表されたときには、「ブロックチェーンがようやく幻滅期に入ったね = 話題として騒がれている時期から、より現実的な利用方法をきちんと試行錯誤される時期になってきたね」というような話が話題となっていました。
実際に、投機的なバブルとしての暗号通貨の盛り上がりが陰りを見せつつ、FiNANCiEのようなブロックチェーンだからこそ可能性を感じる個人の資金調達・ファンクラブサービスが公開されるなど、より現実性のありそうな試行錯誤が増えてきているように感じます。
また、今年の先進テクノロジのハイプ・サイクルは上記のようになっており、アメリカ・韓国でも実際に導入が開始されつつある次世代ネットワークの5Gが流行期の頂点を極めつつあります。
ただし、実際には5Gが当たり前になった世界で「どんな具体的サービスが可能なのか」については、今後色々と社会実験が進んでいくフェーズだと言えるでしょう。
そのため今はまだ、「5Gはことばとして踊っている時期」でもあるため、「過度な期待」がピークである「流行期」に位置しています。
他方で、裏を返すと「5Gに関連する技術・サービス」においては、私たちに広いチャンスが残されている、ということでもあります。
また、今年前半のOculus Questの発表などによって、よりインタラクティブで安価なVR機器が発表され、よりVRが日常生活に影響を与えてくる可能性が産まれ始めています。
これらVR技術に関しては、「イマーシブ・ワークスペース」という「没入型仕事環境」の話題として「黎明期」として言及されています。
実際、既に2018年にアメリカの eXp Realty という会社で「VR出社」を開始したという話が既に話題となったりもしていました。
ですが、ガートナーの考えでは、それらの技術が現実化するのはまだ先である(とはいえ、5〜10年以内)、と考えられているようです。
ガートナーのハイプ・サイクルから考えるべき未来とは?
ただ、上記のようにハイプ・サイクルのみを見ただけでは、具体的にどのような影響が、いつ頃、私たちの身に起こるのか、ということはなかなか想像しづらいと思います。
そのため、いくつかハイプ・サイクルの技術動向を見ながら、どのような未来を想像できるか、ご紹介できればと思います。
4Dプリンターとバイオテクノロジの未来
2018年のハイプ・サイクルを見てみましょう。 黎明期のところに「4Dプリンター」と「バイオ技術」が並んでいます。
個人的にはこの2つの組み合わせは、かなり破壊的な影響を未来の医療に対して提供してくれるように感じています。
「4Dプリンター」とは「動く3Dオブジェクトをプリントできる3Dプリンタ」です。
プリントするオブジェクトに対してプログラムを組み込んでプリントをすることで、「動作する3Dオブジェクト = 時間軸を持った3Dオブジェクト」をプリントすることができます。
研究レベルでは、既に「細胞や有機化合物」を素材として3Dオブジェクトを印刷することができるようになっているため、「臓器をプリントする」という3Dプリンティングももはや現実的に実現可能になってきています。
他方で、「バイオ技術」の中でも、「遺伝子編集」という遺伝子工学の領域と「iPS細胞という万能細胞」を組み合わせて考えると、より価値のある「人工生体組織」を実現できる未来が期待できます。
実際、最近の「遺伝子工学」「遺伝子編集」の技術は、「クリスパー」という技術によって、かなりの精度で思ったように遺伝子を編集することが可能になっています。
この「遺伝子編集」の技術は、iPS細胞という万能細胞の研究と結びつけることで、「自身の遺伝子情報をベースにした複製生体パーツを作成する」ということを実現できます。
実際に京都大学のiPS細胞研究所では、「筋ジストロフィー患者の筋肉細胞を遺伝子編集と組み合わせることによって治療する方法」などが研究されています。
これら、「4Dプリンター」「遺伝子編集技術を中心としたバイオ技術を活用した人工生体組織」を組み合わせれば、外科医療に対して革命的な変化が起きることは想像に難くないでしょう。
臓器移植、がん、HIVなどに対して、自分たちの遺伝子をベースにパーソナライズ化された遺伝子編集を行った臓器・生体組織・治療薬を準備し、根源的な解決策を提示する。
そんな未来が既に技術的には実現できるという未来が、10年後、20年後に迫って来ています。
自律走行(レベル4/5)- 自動運転車の未来
次に2019年のハイプ・サイクルを見てみましょう。
「10年以上のスパンが必要」という黄色の三角での表記になっていますが、「自動走行(レベル4)」「自動走行(レベル5)」という記載がありますね。
これらは基本的にはAI技術の延長線上で実現される自動走行車の話ではあるのですが、社会的な法整備や、5Gなどのネットワークの実現なども必要な前提条件となるため、想定よりも社会実装まで時間がかかるという予見となっています。
そもそも「自動運転」についてはかなり話題になっているにも関わらず、自動運転技術に「レベル4」「レベル5」などのレベリングがあるということを知っている方がそもそも少ないのではないでしょうか?
レベル4は、特定の条件下において完全自動運転を実現しつつ緊急対応も自動化されている自動運転技術であり、レベル5は完全に制約条件のない自動運転を実現する技術となっています。
現在多くの自動車メーカーが市販レベルでの実現を目指している自動運転車はレベル3であり、「高速道路などの限定的状態において自動運転を実現し、緊急対応などは人間が実施する」というフェーズのものが一般的となっています。
また、イーロンマスクがTeslaの事業構想として想定しているものは、「レベル5の完全自動運転車を所有しているオーナーは、自分が乗っていない時間帯に、車が自動的にUberのドライバーとして乗客を運ぶことによって、勝手に年間3万ドルを稼いでくれる」というような世界です。
その未来では、私たちはTeslaを購入したあと、家で寝ているだけで、年収300万円は確保される。 自動運転技術の未来には、そんな未来の可能性もあるわけです。
このように「自律走行」「自動運転」の技術に様々な技術段階の定義があるということを知ることだけで、自律走行・自動運転という技術についてより深い理解をすることができます。
また、イーロンマスクの自動運転に関する構想を知ることで、「完全自動で走る車がある世界で、私たちの生活がどのように変わるのか」という、より具体的な想像力を持つことができるでしょう。
特に、イーロンマスクのTeslaの未来構想は、「テクノロジーを活用することによるベーシックイカムの実現」を、民間企業が具体的な方法として提示した事例でもあり、AIやロボットの活用が「仕事を奪う」のではなく「人々に自由を提供する」という可能性を示す、驚くべき未来構想だと言えるでしょう。
まとめ:ガートナーのハイプ・サイクルを知り、未来への想像力を高めよう!
未来の可能性をよりイメージしながら、ご自身の人生について深く考えられるようになっていくことは、多くの方にとって価値があることだと考えています。
理由は、より深い未来に対する洞察が持てていれば持てているほど、「世界のどこで、どんなことをしながら生きていくのが楽しいか」という人生設計において、より良いプランを考えられるようになるからです。
今回私が紹介したような未来への想像力には、私たちが日常生活を送っているだけでは想像しづらいSF的な話があったかもしれません。
ですが、21世紀前半のテクノロジーの発達は、あらゆる領域において「SFを現実化する」という圧倒的な破壊力を持っています。
そのため、
- ガートナーのハイプ・サイクルを参考に、今後の社会に影響を与える技術について知る
- ハイプ・サイクルで紹介される技術の中から、「ビジネスレベルでどのような実用が進んでいるか」「研究室レベルでどこまで研究が進んでいるか」について、少し調べてみる
という2つのアクションを取って頂くことで、興味がある分野をベースにより未来を先読みした思考ができるようになっていくことができます。
そのような未来への想像力を持つことは、よりおもしろい人生設計をするために有意義だと言えるでしょう。
そして、このようなテクノロジーの無限の可能性を視野に入れるとき、私たちがどこの国出身でどんな言語を話す人種なのか、という話は非常に小さな話に思えてきます。
無限の可能性を持つ未来に向けて、グローバル市民として新しい世界・社会への想像力を鍛えるためにも、「世界共通語としての英語」と「イノベーションの源泉であるIT技術へのリテラシー」を深めておくことは大切です。
そのため、ぜひ人生の早い段階で「海外経験」や「英語・プログラミングなどのスキルの習得」へトライしてみて頂けると嬉しいです。