海外企業への応募で「これまでの仕事を具体的に説明してください」と言われても、顧客名、提案書、社内の数字をどこまで出してよいか迷うことがあります。実績を伝えたい気持ちと、会社や顧客の情報を守る責任は、どちらも大切です。
準備の順番は、誰に、何を、何のために見せるかを決め、その範囲を契約・社内ルール・必要な許可と照らすことです。社名を伏せる、面接だけで話す、相手に秘密保持を頼むといった工夫だけでは、共有してよい根拠にはなりません。説明できない部分は残したまま、伝えられる担当や判断を選びましょう。
この記事は、日本の公的資料を基にした一般的な準備ガイドです。個別の開示可否や契約の有効性を判定するものではありません。海外の雇用契約や適用される国・地域の法律は別途確認が必要です。以下の事例と会話はすべて編集部作成の架空例で、実在企業の規程、許可、採用実績を示していません。資料確認日:2026年10月9日。

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守秘義務・営業秘密・個人情報・著作権を分ける
「自分が作った」「秘密と書いていない」「もう退職した」のどれか一つで、利用の可否を決めないでください。説明に含まれる情報と、資料そのものの権利を分けて確認します。同じ提案書に、会社のノウハウ、顧客担当者の情報、外部の写真が入っている場合もあります。
この記事は、一般的な職歴や技能を話すたびに会社の個別許可が必要だとするものではありません。説明する内容に非公開情報や契約・規程等の制限が含まれるかを確かめ、必要な範囲で確認・承認を受けるためのガイドです。一般的な技能の説明と、社内固有の情報を技能の話に言い換えて開示することは分けます。
- 雇用契約・誓約書などの秘密保持義務
- 何が秘密に含まれるか、利用目的、第三者への開示、退職後の扱い、例外や承認手続を確認します。「NDA」は秘密保持契約を指しますが、その名称の書類だけを探せば十分とは限りません。雇用契約の条項や入社・退職時の誓約書にも注意します。
- 就業規則・情報管理規程などの社内ルール
- 社外発表、私物端末への保存、外部サービスへの入力など、具体的な取扱手順を確認します。上司が業務を知っていても、社外開示の承認権限を持つとは限りません。どの窓口で、誰が判断するかも確認対象です。
- 不正競争防止法上の営業秘密
- 経済産業省は、秘密管理性・有用性・非公知性という三つの要件を示しています。ただし、読者が「この情報は要件を満たさないはず」と判断して持ち出すための基準ではありません。営業秘密に該当しない場合でも、契約や適用される社内規程によって利用・開示が制限されることがあります。
- 顧客・同僚などの個人情報
- 氏名やメールアドレスだけに限りません。ほかの情報と容易に照合して個人を識別できる情報も、個人情報に含まれます。顧客の問い合わせ、人物評価、録音などは、名前を消しただけで問題がなくなったと考えないようにします。
- 会社や第三者の著作物
- 文章・図・写真などには、内容の秘密性とは別に著作権の問題があります。文化庁の説明では、一定の条件を満たす職務著作は法人等が著作者になる場合があります。「自分が作った資料だから自由に転載できる」とは限りません。外部素材の利用許諾も確認が必要です。
根拠:経済産業省「営業秘密」、INPIT「知的財産契約の基礎知識」、個人情報保護委員会「通則編」2-1、文化庁「著作権テキスト」令和8年度版、9頁・47頁以降。
厚生労働省のモデル就業規則にも、在職中と退職後の機密保持を定める規程例があります。ただし、モデルの条文がそのまま全員に適用されるわけではありません。自分に適用される契約・規程を確認する必要があります。守秘義務と、競合企業で働くことを制限する競業避止義務も別の論点です。厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版、第11条
公開、応募先への提出、面接、AI入力で確認先が変わる
同じ一文でも、公開プロフィールに載せる場合と、指定された面接で口頭説明する場合では、届く相手や記録の残り方が違います。「転職活動に使ってよいですか」だけで済ませず、用途を具体化して確認しましょう。
- 一般公開
- 個人サイト・SNS・公開ポートフォリオ。検索、転載、保存をされる可能性も踏まえ、一般公開してよい内容かを確認する。
- 応募先へ提出
- 採用担当者だけでなく、選考関係者、採用管理サービス等の取扱いも確認する。限定リンクやパスワードは、開示許可の代わりにはならない。
- 面接で口頭説明
- 参加者、画面共有、録画・録音・文字起こしの有無を確認する。ファイルを渡さなくても、情報を外部へ伝えることはある。
- 生成AI・翻訳サービスへ入力
- 入力先、保存・学習等の利用条件、会社が認めた用途かを確認する。「応募前の準備」でも別の共有先として扱う。
これは確認点を整理する図です。下の段ほど安全になる順位でも、法律上の許可を判定する表でもありません。
たとえば「指定企業の面接で、許可された概要を口頭で説明する」という承認は、資料のメール送信、公開サイトへの掲載、AIへの入力まで認めたとは限りません。新しい用途が必要なら、その範囲をあらためて確かめます。応募先から「秘密は守ります」と言われても、情報を保有する会社や顧客との約束は別に残ります。
海外の応募先や外部サービスが関わる場合には、情報の種類と実際の取扱いに応じて、外国への個人データ提供などの確認も必要になることがあります。海外企業という名前だけで一律に可否を決めず、会社の個人情報担当に確認してください。個人情報保護委員会「外国にある第三者への提供編」
個人情報保護委員会の生成AIに関する注意喚起は、事業者には利用目的の範囲や入力データの扱い、一般利用者には利用規約・プライバシーポリシー等の確認を促しています。この記事では、実際の社内資料や顧客対応記録を貼り付けて英訳・匿名化させる方法は勧めません。学習に使われない設定だけで、会社からの利用許可まで得られるわけではないためです。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
会社資料を動かす前に、説明案の範囲を確認する
応募用の説明を考えるために、会社のファイルを自分のメールやクラウドへ移す必要はありません。業務上閲覧できることと、転職準備に利用・保存してよいことは別です。アクセス権のない退職者が以前のアカウントで入り直したり、同僚に内部資料の転送を頼んだりするのも避けましょう。
- 見せたい能力を一つに絞る。「顧客条件を整理する力」「対応の優先順位を判断する力」などを選びます。会社の具体的な秘密がないと説明できないのか、先に考えます。
- 確認する対象を特定する。契約・規程の該当箇所、資料の管理区分、公開済み情報のURLなどを、許可された環境で確認します。確認のための複製・持出しも、許可された方法に限ります。
- 承認窓口に用途を伝える。候補となる説明文、相手、目的、口頭か書面か、録画や再共有の扱いを示します。転職活動をまだ社内に知らせていない場合は、まず一般的な社外開示の相談手順を調べ、必要なら外部の専門家に相談します。
- 回答の範囲を記録する。承認者、対象となる文章や資料の版、用途、条件、期限を、会社が認める方法で残します。返事がないことを許可と見なさず、曖昧ならその情報の使用を保留します。
- 共有範囲を確認できる?
契約・規程・必要な権利や許可を確認する。未確認なら、実資料も具体的な非公開情報も出さず、次の方法を検討する。
- 確認できた範囲で説明する
認められた相手・目的・方法に限定する。説明を足したり共有先を増やしたりするときは、再確認する。
- 公式の公開情報を使う
公開された事実と出典を示す。内部の背景を補わず、転載や自分の担当の説明についても必要な確認をする。
- 独立した架空課題を作る
実データや秘密の手順を移さず、別の設定から作る。自主制作と表示し、実務上の成果と混ぜない。
上から順に許可が不要になるわけではありません。どの方法でも残る制限を確かめ、解決しない素材は使わない選択をします。
確認文は、たとえば「外部の採用面接で、添付の説明案の範囲を口頭で伝えることは可能でしょうか。元の社内資料は提示しません。録画がある場合や書面提出を求められた場合は、追加確認が必要でしょうか」と具体化します。これは相談用の文例です。添付案自体に秘密を含める場合は、指定の社内経路で扱い、私用メールに送らないでください。
営業・顧客サポート・業務改善の説明を組み直す
ここからの三例は、共有範囲を考えるための架空ケースです。まず確認できた担当の説明を考え、別の提出物が必要な場合に公開情報や独立した課題を検討します。「この表現ならどの会社でも話せる」という許可済み文例ではありません。実際に使うときは、自分の事実と確認できた許可に置き換えてください。
営業提案:顧客向け提案書から、自分の役割の説明へ
- そのまま出せない素材
- 顧客名、個別価格、未発表の導入計画、他社との比較を含む提案書。本人が作ったページにも、会社と顧客の非公開情報が入っています。
- 話せる範囲を確認する項目
- 取引の存在や業界を言えるか。顧客との契約で何が制限されているか。本人の担当工程だけを一般化して説明できるか。口頭説明と提案書の提出を、別々に確認します。
- 確認後の説明例
- この架空ケースでは、権限のある窓口が、指定面接で担当工程のみ説明することを認めた設定です。「私は顧客の要望を整理し、確認が必要な条件を社内担当者へつなぎ、提案の構成を作りました。価格決定と最終承認は責任者が担当しました。顧客名と個別条件はお伝えできません。」
ここでは、受注額や成約率を足していません。担当の説明が認められても、売上や商談の結果まで開示できるとは限らないためです。もし担当工程も話せなければ、勤務先の提案書を作り直すのではなく、架空店舗の備品選定など別の課題で考え方を示す方法を相談します。
顧客サポート:対応ログを出さず、担当したことを説明する
- そのまま出せない素材
- 顧客とのチャット画面、注文番号、問い合わせの経緯、内部の対応基準。名前を隠しても、日時や購入内容から個人や案件が分かる可能性があります。
- 話せる範囲を確認する項目
- 対応記録の転職利用が認められるか。個人情報や顧客から受け取った文章を含まないか。公式に公開されたFAQを出典付きで紹介できるか。自分がそのFAQを作成したと示してよい事実と権限があるかも分けて確認します。
- 確認後の説明例
- この架空ケースでは、権限のある窓口が、指定面接で以下の一般化した担当工程を説明することを認めた設定です。「私は問い合わせ内容を整理し、自分で案内できない条件を担当者に確認して、回答につなぐ役割を担いました。顧客ごとのやり取りや内部の判断基準は共有できません。」
この説明で伝えるのは本人の役割です。対応件数、解決率、顧客評価は加えません。実際に使う際は、自分が担当した事実と説明できる範囲に置き換えます。
別の提出物を求められた場合:実際の対応記録を共有できなければ、正規に公開されたFAQを使う演習でよいか相談します。「こちらは企業が公開している利用案内で、私が作った文書ではありません。この公開情報だけで考えるなら、問い合わせが『使い方』か『契約条件』かを分け、案内できない点を確認します」と位置づけを示します。これは過去の対応実績の証明ではありません。FAQ本文や画像を丸ごと転載せず公式ページを参照し、社内の例外対応や実際の顧客の発言は補いません。
業務改善:社内管理表から、架空の依頼受付シートへ
- そのまま出せない素材
- 部署別の処理量、担当者名、障害履歴、社内システムの画面。会社独自の承認基準や業務上の弱点が読み取れる管理表も含まれます。
- 話せる範囲を確認する項目
- 業務の仕組み自体が秘密か。項目名や判定条件に独自ノウハウが残らないか。一般的な整理力だけを示す別課題が作れるか。自主制作に実際の改善効果を付けないことも確認します。
- 実資料に代わる提出物が必要な場合の例
- 「元の会社の管理表は使用していません。架空の地域交流会で、備品の利用希望を受け付けるシートを自主制作しました。入力欄は『備品の種類』『使用日』『返却予定日』『確認状況』です。使用日より返却予定日が前なら確認待ちとする想定で、入力例を作って見直しました。」
題材、データ、文章、レイアウトを別にし、実際の社内手順の復元になっていないかも点検します。この例で確かめたのは架空入力に対する条件だけです。「会社で導入された」「工数を削減した」とは言えません。実際の職歴は、別に確認できた担当範囲だけ説明します。
三例に共通するのは、素材を削って外見だけ変える前に、伝えたい能力へ戻ることです。提出物が必要か、口頭の説明や応募先が用意した課題で代替できるかも、採用担当者へ確認できます。秘密の資料を出すことだけが、具体性を示す方法ではありません。
名前や数字を変えても、残る情報がある
黒塗りや社名の置換は、共有を認められた資料を整える工程の一部にはなり得ます。しかし、それだけで開示してよくなるわけではありません。「特定の地域で、ある月に始まった唯一の大型案件」といった特徴が残ると、会社や顧客を推測されることがあります。これは個人情報の該当性とは別に、案件の秘密を守るためにも考えたい点です。
公開を認められたファイルを加工する場合にも、コメント、変更履歴、隠しシート、画像の下の文字、ファイル名や作成者情報などに注意します。PDFの上から黒い図形を置いただけでは元の情報が残ることがあります。自分で安全だと決めず、指定の方法で処理し、権限のある担当者に最終版を確認してもらいます。
非公開の売上を割合に直す、金額を幅で示す、顧客数を丸めることにも、同じ注意が必要です。元の数値を推測できたり、集計結果そのものが秘密だったりします。また、根拠のない「約30%改善」を加えるのは、守秘への配慮ではなく実績の改変です。確認できない数字や、実際に受けていない顧客の評価は使いません。
記憶で書き直した内容も、秘密情報である可能性は残ります。会社の公開事例を使うなら、正規の公開元と記載範囲を確認し、公開されていない事情を補わないことが大切です。ネットに見つかった情報が正規の公開物とは限らない点は、INPITのFAQでも注意されています。INPIT「営業秘密管理」FAQ
面接で話せないときの自然な日英文
説明を断るときは、相手を責めず、共有できない範囲を短く伝えます。そのうえで、許可された自分の役割、一般的な考え方、別の課題へ話題を移します。次の英文も編集部作成の練習例です。「説明できる」と言う部分が実際に許可範囲に入るかを、先に確かめてください。
- 顧客名や商業条件を聞かれたとき
- 「顧客名と個別の取引条件は共有できませんが、開示が認められている範囲で、私の担当と進め方を説明できます。」
I can’t share client names or specific commercial terms, but I can explain my role and approach within the scope I’m allowed to discuss. - 社内資料の提出を求められたとき
- 「その社内資料を共有する許可はありません。代わりに、公開情報を使った演習か、独立した架空サンプルでもよいでしょうか。」
I don’t have permission to share that internal document. Would an exercise using public information or a separate fictional sample be acceptable? - 確認していない詳細を急に聞かれたとき
- 「その詳細を開示してよいかは、まだ確認できていません。今日は説明を控え、別の例を使ってもよいでしょうか。」
I haven’t confirmed whether I’m allowed to disclose that detail. Could I use a different example today? - 効果の数値を確認できないとき
- 「削減率は確認できていません。共有が認められた範囲では、私が担当した変更点を説明できます。」
I haven’t verified a reduction percentage. I can explain the changes I was responsible for within the scope I’m allowed to share.
「守秘義務なので言えません」の後に、結局細かい条件を話してしまわないよう、練習では追加質問も用意します。「顧客名だけなら?」「画面を見せるだけなら?」「NDAを結べば?」と聞かれたときも、既に確認した境界を維持します。応募先が秘密保持契約を結んでも、現職・前職との義務や第三者の権利は自動的には解消しません。
面接の途中で録画やAI文字起こしが始まると分かったら、準備時に想定した条件との違いを確認します。録画を止めてもらえば何でも話せるという意味ではありません。確認が取れていない話題は控え、必要なら後日の説明や別の課題を相談します。

誰に何を見せるかを決めるチェックシート
次の欄は、応募で使いたい経験一つについて埋めてください。シート自体に非公開情報を詳しく書き込んだり、社内資料を貼ったりする必要はありません。管理区分や確認状況など、許可された範囲のメモにとどめます。第三者に送信するフォームではありません。
応募前の共有範囲チェック
- 1 伝えたいこと
- 能力・担当は何か:____
主張の根拠と、自分の担当外・未確認部分:____ - 2 相手・目的・方法
- 誰に、何のために:____
一般公開/応募書類/面接/AI等への入力:____
録画・保存・再共有など確認が必要な点:____ - 3 含まれる情報
- 会社の非公開情報/顧客との約束/個人情報/第三者の著作物:____
本文以外の履歴・画像・ファイル情報:____ - 4 確認できた根拠
- 契約・規程・公開元の該当箇所:____
権限のある確認先、回答日、対象版:____
認められた相手・用途・範囲・条件・期限:____ - 5 今回使う説明
- 確認した範囲の一文:____
実資料に代わる提出物が必要か:____
必要な場合、公開情報や独立した架空課題へ置き換える部分:____ - 6 保留と再確認
- 使わない素材、未確認の論点:____
用途・相手・内容が変わったときの確認先:____
記入例は「指定面接で担当工程の概要を口頭説明。提案書、顧客名、価格は提示しない。録画ありの条件は未確認なので、その話題は保留」です。「確認済み」の一語だけにせず、何を確認し、何が残ったかを書きます。許可が得られなければ、その素材を使わない判断までが準備です。
判断がつかないときの相談先と次の一歩
社内手続は人事・法務・情報セキュリティ部門、個人情報は個人情報保護の担当者、顧客との契約や公開物は契約・広報等の担当者に確認します。組織によって役割は違うため、窓口から承認権限のある担当へつないでもらいます。顧客への直接連絡も、自分の判断で始めず会社の手順に従ってください。
契約の解釈や、社内へ相談しにくい事情がある場合は、雇用・秘密保持や関係する国の法律に詳しい弁護士等へ相談します。個人情報保護法の一般的な疑問には、個人情報保護委員会の相談窓口もあります。ただし、公的窓口や転職エージェントの一般的な説明は、勤務先からの開示許可にはなりません。相談時の資料の渡し方も、先に確認しましょう。
雇用主の所在国、働いた国、契約の準拠法、情報の共有先などによって、検討すべき法律は変わり得ます。この記事の日本の資料だけで、海外の職場に同じ結論を当てはめないでください。会社の許可だけで、個人情報や第三者の権利などすべての問題が解決するとも限りません。
まずは一つの経験について、シートの「相手・目的・方法」を埋めましょう。そこから、確認した範囲の説明を短く作り、使えない素材には公開情報や独立した課題を用意します。具体性は、秘密を多く明かすことだけで生まれるものではありません。自分が担当したこと、判断したこと、確認できないことを区別する姿勢も、仕事の進め方を伝える材料になります。
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