人工知能(AI)の到来は、私たちが時間をかけてやらなければならない作業を大きく簡略化してくれるため、仕事をサポートしてくれる存在としてはこれ以上ない頼もしさを秘めています。
一方、AIのあまりのポテンシャルから、人工知能に対する期待と同時に不安の声も大きくなってきています。
AIのあまりの利便性の高さに、人間の仕事がなくなってしまうのではないかという声です。
ロボットやコンピューターなど、新しいテクノロジーが登場すれば必ず議論の的となる人間の職業の問題ですが、AIはその汎用性の高さゆえ、近年では最も大きな話題を呼んでいるようにも伺えます。
ただしAIは人間ではなく、あくまでもコンピューターの一種です。人間にできないパフォーマンスが可能でも、人間に取って代わる生命体として振る舞うことはできません。
今回は、そんなAIが登場したことによって変わる人間の職業事情や、そもそもAIがどこまで人間の代わりに仕事ができるのか、そしてAIと人間が共存するために必要なスキルについてご紹介していきます。
記事のもくじ
人工知能(AI)が得意とする仕事
まずは、AIがどういった特徴を生かして活躍してくれるのか、見ていきましょう。
一見万能と思われるAIにも得意なことと苦手なことが存在しているので、必ずしも人間のすべての仕事をそっくりそのまま真似できるわけではありません。
データ処理
まずAIが得意とする仕事として、データ処理のような単純作業が挙げられます。
毎日の売り上げの記録を集計し、過去のデータから今後の売り上げ予測を立てていくなど、すでに蓄積された膨大なデータを短時間でインプットすることにかけては人間よりはるかに優れています。
また通常のプログラムとは違い、AIの場合は自律的にデータを独自に解釈することも可能です。
例えばAIを用いた画像認識機能を導入したい場合、画像認識をAIが行えるようにサンプルデータを大量に用意する必要があります。
いわゆる機械学習と呼ばれるAIの育成方法ですが、人工知能であれば大量に読み込ませた画像から独自に共通項と相違点を導き出し、人間では思いもよらないプロセスで高い精度の画像認識が行えるようになっていくのです。
このプロセスは人間に理解することはできず、その不透明度の高さからブラックボックスと表現されることもあります。
ただどのような手順を通じて認識しているにせよ、AIは人間と同等か、それ以上の認識能力を持つ可能性を秘めているのです。
人工知能(AI)が苦手とする仕事
一方で、AIが苦手とするタスクも少なくありません。
AIは基本的に1つのプログラムにつき1つの能力というタイプが大半であるため、一点特化のパフォーマンスは目を見張るものがありますが、人間のようにマルチタスクを複合的に処理する能力には欠けている側面などもあります。
複数の業務の遂行・管理
AIは1つの作業をおそるべきスピードでこなしてくれるのはいいのですが、自分が与えられているタスク以外のことにそのパフォーマンスを発揮することができません。
これはいわゆる特化型AIの特徴とされていて、人間のように1つの経験を別の分野に生かすことができないため、この点は現状のAIの問題点としてよく取り上げられています。
一方で、この問題を解決するために開発が進められているのが汎用型AIと呼ばれるものです。
これはSF映画などで出てくるまるで人間のような柔軟性とマルチタスキング能力を備えているため、まるで人間のような振る舞いをするとされています。
ただ特化型AIに比べて開発が非常に困難となる上、未だどの企業や国においても実践レベルで活躍できるものは少ないとされています。
そのため、一般企業が導入するものとしては特化型AIが現実的なテクノロジーとされています。
答えのない哲学的な問い
AIが苦手とする分野として、計算によって導くことのできない人文的な問いに対するアウトプットも掲げられます。
AIはあくまでも既存の法則や数式、データから適当な解を導くプログラムであるため、答えがない問いにはうまく回答ができないこともあります。
もちろん過去の人文学者や哲学者のデータベースを参考にしながら意見を提案することはできるものの、そのAIの個性を問うオリジナルの解答をアウトプットするのは難しいと言われています。
人工知能(AI)の登場でなくなる職業とは?
こういったAIの特徴を踏まえて、次にAIの登場によってなくなるかもしれない既存の職業について見ていきましょう。
事務職は軒並み代替されていくかも
AIで代替可能な職種としては、まず事務職全般がその候補に挙がっています。
マネー現代の記事『オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」 』によると、既存の職業の半分はAIに取って代わるとされています。
電話オペレーターやデータ入力業務、アナリストやクレジットカード、保険の審査業務など、多くの職業はAIが担うことができるとのことです。
そして事務職だけでなく、ネイリストや彫刻師、映写技師といった専門的な職種もAIが取って代わるとも言われています。
3Dプリンタなどの立体造形技術が進化し、AIがそこに搭載されることによって、人間でなくとも多様なニーズに応えられるようになれば、こういった未来は十分に近い将来実現する可能性はあるでしょう。
出典:週刊現代『オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」
人工知能(AI)と共存できる職業もある
一方で、AIで代替可能な全ての職業が完全に人間に取って代わるとも限りません。
例えばレジ係などは現在日本でも段階的に自動レジの導入が進んでいますが、有人のレジも同時並行で未だ活動しています。
もちろん今がAI過渡期であるということも同時並行で活躍している理由でもありますが、これからしばらくは増加し続けるであろう、デジタルネイティブではない高齢者は、使い慣れた有人のレジを好んで使うことも考えられます。
あるいは、レストランのウェイターやネイリストといった職業も同様です。
これらの職業は確かにAIで自動化させることは可能ですが、人間のウェイターやネイリストとコミュニケーションをとりながらサービスを享受したいという需要はこれからも残り続けると考えられます。
技術的には合理性に特化したAIに代替可能でも、ニーズによっては必ずしもそれが正解であるとは限らないのは難しいところです。
人工知能(AI)の登場で新たに生まれる職業・生き残る職業
次に、AIの登場によって活躍が期待できる職業についても見ていきましょう。
エンジニアの重要性は飛躍的に増大
AIもまたプログラムの一種である以上、エンジニアの地位はこれからも大きくなり続けるとされています。
AIは自律的なプログラムであるとはいえ、あくまでその設計と構築は人間の仕事です。構築後もサーバーの保守・点検も必要になるため、エンジニアの仕事は引く手数多となることが予想できます。
対人コミュニケーションやヘルスケア部門も重要に
AIによってバックオフィス業務が自動化されることで、営業やコンシェルジュのような対人コミュニケーションが必要な職業の価値は大きくなるとも言われています。
人間同士の会話の重要性が高まるため、コミュニケーションそのものに付加価値が生まれるためです。
あるいはヘルスケア関係の職業です。AIやロボットによって診療や手術のサポートのパフォーマンスは向上するかもしれませんが、カウンセリングやリハビリのように、患者とのコミュニケーションによって治療が進むケースも少なくありません。
AIの登場によって、これらの職業の意味や価値は少しづつシフトしていくことが考えられます。
AI時代を生きていくために必要なスキルとは?
最後に、AI時代を生き抜くために必要なスキルもまとめて見ていきましょう。
プログラミングスキル
1つはプログラミングを行うスキルです。すでにスマホやPCに囲まれながら生活しているように、現代人の生活はITサービス有りきのものへとシフトしています。
ここにAIが加わることでその重要性はますます増していくことが考えられるため、卓越したエンジニアリングのスキルまではいかなくとも、一般教養としてプログラミング言語を何か1つは使えておくと有用でしょう。
人工知能への造詣
もう1つがAIへの造詣です。AIはこれまでにないプログラムであるため、その可能性は既存の技術とは比較にならないものがあります。
一方でその汎用性の高さから人間の尊厳や、倫理的な問題が生まれることも珍しくありません。
AIの可能性とそのリスクについての知識を身につけ、必要以上に恐れたり、過信したりしないような教養を身につけましょう。
人文科学・コミュニケーション能力の向上
あるいは人間としての文化レベルを底上げすることも重要です。
様々な名著や映画に触れたり広く趣味を持つことで、人文学の造詣を身につけておけば、人とのコミュニケーションにも花が咲くだけでなく、AIと人間の違いについての自分なりの考え方も生まれるようになるかもしれません。
終わりに
AIによって人間の仕事がなくなるかもしれないという懸念は、その利便性の認知度の高まりによってますます大きくなっているようにも思えます。
ただこれまでの歴史を振り返ると、技術の進歩によって失われた職業の代わりに新しい職業が無数に生まれてきた例も数多くあります。
AIの到来は不可避な事実である以上、そのことを受け入れた上で、新しい可能性に目を向けることが重要になっていくでしょう。