AI(人工知能)は今やどんな分野の仕事をするにしてもその名前が上がり、エンジニアリングに疎い人でも耳にする機会が増えてきました。
これからはAIの時代といわれる中で、ただ知識を持っているだけでなく、実際に運用できるスキルをも必要とされるようになってきています。
また、AIはその身近さに合わせ、仕組みや開発も昔に比べて大いに易しくなっているとされています。
今回はそんな現代を生きる人が覚えておくべきAIの仕組みや、人工知能を開発するために必要な知識、学習に役立つ教材などをご紹介していきます。
記事のもくじ
独学・個人でのAI開発は身近になった?
AIというキーワードが現実味を帯び始めたのは、ごく最近のような気がするかもしれませんが、その前からもAI開発はずっと続けられてきました。
しかしそれでもこれだけ一般にAIが普及した理由としては、大手IT企業のAIが次々とオープンソースとして一般公開されるようになったことが大きいと考えられます。
オープンソース化の進むAI
オープンソース化というのは、あるプログラミングのコードを不特定多数に公開し、誰でも自由にコードをコピペしたり、独自に改変してオリジナルのプログラムに組み替えてしまうことができるというものです。
一般的に、企業が独自に開発しているプログラムというものは機密事項にあたるため、特別な指示がない限りは非公開にすることが多いものです。
プログラムを公開してしまえば、セキュリティの脆弱性の露呈や、特許権の侵害のような権利の問題が発生してしまうリスクが高まるためです。
一方、オープンソース化のメリットとして、そのプログラムの開発が企業だけでなく、興味のある人なら誰でも行えるようになるという点が挙げられます。
企業で進むAIの開発は個人のそれとは規模もスピードも違いますが、グーグルやマイクロソフトはこれを一般公開してしまうことで、さらなるAIの精度向上と、新たなサービスの誕生の機会を提供したというわけです。
AIを一から作るのはコストがかかりますが、すでにある土台をカスタマイズしていきながら組み立てていけば、飛躍的に開発コストの低下を進めていくことができます。
AIが様々なアプリやハードに搭載されるようになったのは、こういった背景が大きいと考えられるでしょう。
初心者でも作れるAIが搭載されたサービス
このようにAI開発の難度が大きく易化したことで、これまでAIはおろか、プログラミングに携わったことがないという人でも、AIを搭載したサービスを開発しやすくなりました。
例えば、過去の売り上げから次期の売り上げを予測する売り上げ予測AIや、テキストチャットボットでありながら、より人間に近い柔軟な回答ができるAIチャットボットなど、様々なモデルが多様な分野で活躍しています。
AIは未来的なロボットではなく、これまでの業務をさらに簡略化するための便利なツールです。さらにいうと、ほとんどのAIは統計解析ソフトの延長線上にあるため、AIを新しい統計ソフトと考えると、そのハードルは低く感じられるのではないでしょうか。
独学・個人でAI開発するために必要な知識
それでは次に、AIを開発するための基本的な知識についてご紹介します。
AIの開発は難しそうに思えますが、いくつかの段階に分けて各工程を見てみると、とっかかりを掴みやすいのではないでしょうか。
AIの仕組み
AIもその他のシステムと同様、基本的にはコードの集合体であるプログラムの1つに過ぎません。
一般的に普及しているAIは、特化型AIと呼ばれるもので、何か1つの業務に優れた能力を発揮してくれます。
画像認識であったり、統計予測であったり、テキストコミュニケーションであったりなど、その役割はAIによって様々ですが、それらを人間のように複合的に組み合わせることはまだ難しいものがあります。
そして、今多くのAIの処理能力を飛躍的に高めているのが、ディープラーニングと呼ばれる機械学習の一種です。
機械学習は特定の目的とプロセスとともにAIへ大量のデータを与え、自主的にデータを処理できるよう促すものですが、ディープラーニングは目的とデータのみを与え、データの処理の方法はAIに任せてしまうというものです。
与えられたデータの処理の方法は独自のプロセスで導き出され、時として人間では思いつかなかった視点が与えられることもあります。
ディープラーニングは発展した技術でもあるため、初学者が一朝一夕で用いることができるとは限りません。
ですが、いずれ近いうちにそのような未来的なテクノロジーを扱えると分かれば、モチベーションアップに繋がるのではいないでしょうか。
AIの開発プロセス
AIの開発プロセスは、一般的に3つの段階に分かれます。
1つ目はデータ収集です。実装するAIに合わせて有益とされるデータを人間が集め、大量に蓄積しておくことが必要です。
2つ目にデータの学習です。収集しておいたデータをAIに読み込ませ、期待しているデータ処理ができるよう、AIにあらかじめプロセスと目的を指定しておき、正しくAIに学習させていきます。
この段階である程度AIで学習が進めば、システムの根幹は完成します。
3つ目にシステムの実装です。構築したAIが誰でも正しく利用できるよう、UIを拡充し、サービスとして利用できるように整えていく段階です。
こうしてAIを用いたシステムは完成するわけですが、AIの強いところは完成後も自律的に学習を進めていくことができる点です。
ユーザーがそのサービスを利用すればするほど、新たなデータサンプルも手に入るので、使い込むほどに精度を高められる可能性も有しているのがAIのメリットです。
独学・個人でAI開発をするのに必要なプログラミング言語
次に、AIの開発現場でよく使われるプログラミング言語についても見ていきましょう。
AI開発も通常のプログラミングと同様、特別な言語が使われることはないのですが、ポピュラーなものはいくつかの言語に限定されるようになってきています。
Python
AI開発の現場で今最も人気があるプログラミング言語は、何と言ってもPythonです。
Pythonは元々統計解析の分野で多くの支持を集めていたこともあり、AIを扱う現場でも大いに活躍している言語です。
また、少ない行数のコードを入力するだけで動作したり、読みやすさと書きやすさにも優れているという難易度の易しさにも定評があります。
初心者がプログラミングを学ぶのにも、最適の言語です。
R
RもPythonと同様、統計解析の現場で活躍するプログラミング言語です。
コミュニティの分厚さとユーザー数の多さからネット上の情報量も多く、トラブルシューティングには事欠かないのが登頂です。
Julia
Juliaは2012年にリリースされた、かなり新しいプログラミング言語の1つです。
C言語をベースにするJuliaは、その速度が何よりの特徴です。
コーディングが複雑になってくると、スムーズに動作させるためには最適化のための工程を踏まなければいけないのですが、Juliaはそのような作業の負担を大幅に削減する可能性を秘めた言語となっています。
独学・個人でAI開発するのに役立つ教材5選
最後に、独学でAIを学ぶのに最適な学習教材もいくつかご紹介しておきます。
Pythonで動かして学ぶ! あたらしい機械学習の教科書(翔泳社)
AIを、Pythonを使って学習していきたいという人にとっては必読となるのがこちらです。
AIの根幹となる機械学習の仕組みを、Pythonを使いながら学ぶことができるため、AIの仕組みもPythonの使い方も知りたい人には一挙両得の書となっています。
入門 Python 3(オライリージャパン)
Pythonの使い方を、網羅的に記しているボリューミーな学習書です。
初心者はもちろんのこと、中級者でも必要な情報を逆引き的に参考にすることができるので、ずっと本棚においておける一冊です。
退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング(オライリージャパン)
こちらはPythonの初歩的な使い方にとどまらず、Pythonを用いて日々の雑多な作業を自動化してしまうためのノウハウを記した教材となっています。
AIの根幹は作業の自動化ですが、そんなAIのエッセンスをこの本から学ぶことができるでしょう。
はじめてのR: ごく初歩の操作から統計解析の導入まで(北大路書房)
統計解析を中心に学習を進めたい人は、Rを用いた学習がオススメです。
R言語関連の書籍はPythonと同様、多様な種類のものが販売されているので、本屋などで手にとって見てみるのも良いでしょう。
AIにできること、できないこと、ビジネス社会を生きていくための4つの力(日本評論社)
こちらは直接プログラミングを使って何かを実装する指南書ではないものの、AIをどう使えば良いかの指標を立てるのに役立つ一冊となっています。
ビジネスの視点でAIの活用方法が書かれているため、エンジニアリングとはまた違ったアプローチでAIを理解するのに役立ちます。
独学・個人でAIの開発は可能?人工知能の仕組みと学習方法を紹介のまとめ
AIはプログラミング言語の普及や企業が自社のAIをオープンソース化したことで、私たちにとって身近に学べるテクノロジーとなりました。
AI開発も蓋を開けてみればプログラミングによって構成されており、大まかな開発プロセスはそのほかのシステムとそう変わりません。
PythonやRなど、自分の興味や関心に最適な言語を選び、まずは実用書を読むところからでも学習を進めていくと良いでしょう。